朝はパン パンパパン

愛する妻も店の資金も、頼れる相棒もなくしてサジは途方にくれた。なにもかもを投げ出したくなったけど、そうするわけにはいかなかった。
リョウが、自分が守らなきゃならない存在がいる。
リョウはひととの関わりを避けるようになってしまっていた。元からあまり活発な方ではなかったけど、家からも、やがては自分の部屋からも出てこなくなった。
サジが一緒に菓子を作ろうと誘っても、そのドアが開くことはなかった。これまでは喜んで飛び出してきていたのに、ドアは固く閉ざされたまま。
そんなサジとリョウを心配して、サジの妹のユズが店や家事を手伝うためにきてくれた。リョウにとっては叔母にあたるひとだ。