朝はパン パンパパン
したたかに尻餅をつくと同時に、部屋の明かりがパッと灯る。眩しさに顔を覆いかけたが、それよりも体勢を立て直して身構えるのを優先した。捕まるわけにはいかない。
「おっ、いい判断だ。そのままだったらあっさり捕まってたぜ」
場違いなほど陽気な声に顔を上げると、裏口を塞ぐように黒いコートを着た男が立っていた。
いつ切ったかもわからないようなぼさぼさの髪に、どこかにやけた口元。しかし目は猛禽のように鋭く、一挙一動も見逃すまいと少年を捉えている。
もう3回目だ。どれだけ鈍い奴だって忍び込まれてるのに気づいて、捕まえようとする。もっと警戒すべきだった。
己の迂闊さに舌打ちした。