朝はパン パンパパン

「ちょ、ちょっと、離れなさいよ!暑苦しい!」
「やだよ、かりんと離れたくない」
「私だってそうよ!でも、しょうがないの」
櫻井さんの泣き出しそうな声に顔をのぞきこむと、眉を八の字によせていた。櫻井さんは泣きそうなとき、いつもこんな風に歯を食いしばっていた。
「ごめん、わがまま言って」
ふんと鼻をならしてからだを離し、櫻井さんは腕を組んだ。口元にはいいことを思いついたような笑みが浮かんでいた。
「許してほしいならお別れ会の日、早めにうちに来て手伝ってよ」
「うん、いいよ!」
「なにを手伝ってほしいかも言ってないのに、あんたってやつは」
櫻井さんはあきれたような顔をした。