朝はパン パンパパン

お母さんが初めて作ってくれた蒸しパンの味を今でも覚えている。
見た目はふわふわして蒸しパン独特のやさしいにおいもしたのに、一口食べて親子そろって目をまるくした。
「味がしない…」
お父さんの呟きにお母さんはううんとうなった。
「お砂糖こんなに入れたら病気になっちゃうと思って控えめにしたけどちゃんと必要な分量だったのね」
だからかあとうなずくお父さんをお母さんは軽くにらんだ。
おおざっぱに作るくせにお父さんの作る料理は不思議と美味しいから、丁寧に作るのにあんまり美味しくできないお母さんはそれをよく悔しがっていた。わたしも料理を作るようになってその気持ちがよくわかった。