朝はパン パンパパン

「それでは一時間目の授業を始めるぞ」
「先生、私まだ教科書がありませんわ」
隣のパン子さんはおっとりとした口調ながらなかなかはっきりと物を言う。口がないのにいったいどこから声を出しているんだろう。ちゃんと耳から聞こえているし、テレパシーの類いではないよな。
「おお、そうか。じゃあ加藤、教科書を見せてやれ」
先生に言われては仕方がなく僕は一条さんと席をくっつけた。羨ましそうに見ている男どもと代わってやりたい。
「ありがとうございます」
一条さんは律儀に礼を言うと、教科書を見ようと首を傾けた。ふわりと小麦の香りが鼻をくすぐる。給食はパンがいいなあ。