インタビュー

久しぶり、海月ちゃん!

夜のビル街を突き抜け、歓楽街を歩いていた時でありんす。

チラホラとコチラを見てくる輩もいるが・・・、
秋なのに着ているものが、
小兵帯で適当に着こなした浴衣に革ジャン、鉄板の仕込んである厚底ブーツ、適当に伸ばされた髪は背で一括りにされて揺れている。
腰に刀でもぶら下げれば、サムライに見えなくもない。

コレで目を引かないというのもおかしなものかや。

さてさて、歩くは夜の歓楽街。

酔っ払ったサラリーマンから、
色っぽい格好をしたお姉ちゃん、
明らかに堅気じゃ無い者まで、
より取り見取りでありんす。

っと、いきなり横付けに黒尽くめの車が止まり、

「久しぶり、海月ちゃん!」

スモークガラスが開き、
”いかにも”な人物が声を掛けてきんす。

(どちら様だったかや・・・?)

記憶を手繰るが覚えがありんせん。

「すまぬ、ぬしはどちら様かや?」

「あははははは。最後に会ったのは、4歳ぐらいのときかな。○○組って言えば解る?」

(なるほど、爺様のお知り合いの組長さんかや。)

「爺さんの知り合いとお見受けしんす。先ほどは気付かず失礼。」

「うんうん、お爺さん亡くなってから、大分経つけれど、大きくなったねぇ。」

「これでも成長期でありんす。」

「あははははは、そいつは先が楽しみだ。そんな格好じゃ寒いだろう?中に入りな。」

堅気者じゃない車に乗る。
普段なら考えられない事じゃが・・・。

「それなら失礼しんす。」

そう言って、組の若い衆が開けたドアの隙間に体を滑り込ませる。
流石、○○組、良い座り心地じゃな。

「で、わっちに声を掛けてきたと言う事は、偶然ではないのじゃろう?」

「流石は”流れ者”の海月ちゃん。話しが早いねぇ。
まぁ、話しは呑めるところにでも行ってしようや。」

(つまりは、密談かや。)

「・・・そうじゃな。」

”流れ者”の二つ名は爺様のものだったんじゃが、
今では、わっちが受け継いでおる。

そして一人、現代の侠客として生きてきた爺様から受け継いだもの。

伊達に、一人者としてやってきていない爺様は、
時には組と組の仲裁に入り、
そして、時に命を狙われては返り討ちにし、
その組自体に単体で話しを着けるという、
ある意味、無謀な方だったんじゃが・・・。

だからこそ、色々な組に一目置かれるような存在じゃったんじゃが。

そんな爺様に育てられ、
無謀者を継承してしまったのが、わっちでありんす。
そして、継承したものは、それだけではありんせん・・・。

正直、枕を高くして眠れる堅気の世界とは違うところに居つつの生活は、
十代のわっちには荷が重いと思ったんじゃが・・・何とかなってしまうものでありんす。
まぁ、亡くなった爺様の後光は否定できんが・・・。

(それでじゃ、○○組と言ったら関東・・・主に東京都内を、ほぼ取り仕切っておる。あまり、具合の良い話しでは無さそうじゃ・・・。)

色々と、思考をめぐらせている間に、
店に着き、個室へと通される。

ドアを通る際に、横を見ると横に数人の組の若い衆。
隠してはおるが、全員ハジキを、持っておる。

(ちょいと、気を張らないといけなくなるかや。)

下手をすれば、わっちの命が危うくもなりんす。
まぁ、この人数なら、”何とか”出来ないこともないかや。

奥に座った組長が、お酒を手酌で呑みながら、
適当に話しを振ってきんす。

その会話に適当に相槌を打ちつつ、
そして、時間が経ち・・・。

「そろそろ、話しをするか。」

「・・・えぇ。」

「実は名古屋の××組と組もうと思っててな。」

(待ってくりゃれ、××組といえば大阪を中心とした関西の、結構大きな組じゃないかや。)

「ふむ、それで”流れ者”のわっちに何をしろというのかや?」

表情を変えずに、淡々と聞き返す。
ここで、表情を変えるようでは生きてはいけない。
そう、生きていける訳がありんせん。

「実は、関東、関西で手を組んで商売をしようと思ってな。」

そう言ってグラスのウィスキーを一気にあおる組長。

確かに、昔のような”商売”では組を存続させる事は難しい。
ホワイトカラーの企業でもバックには・・・っと、言うのはよくある話しでありんす。

(しかし、話しが大き過ぎでありんす。下手をすると、別の組同士の抗争にもなりかねん・・・だから・・・。)

「わっちに仲介人をさせるつもりかや?」

「そのつもりだ。」

「幾らなんでも、無茶だと思うが・・・。」

「”流れ者”らしくない発言だな。」

挑発気味の発言。


「血が流れるのは覚悟の上かや・・・。」

「多少はな。」

しかし・・・。

「しかし、わっちも含まれるとなるとなぁ?」

挑発には挑発を。

「おい!!」

これは、わっちへの怒鳴り声でなく、
外に居る若い衆を呼ぶため。

トランクケース抱えた部下が机の上に置き出て行く。

「開けてみな。」

開けなくても、見当はつきんす。
しかし、確かめてはおくかや。

中には札束の山。

・・・金に動かされて、立会人になれば、
それは、それで問題になりんす。

「この程度の小遣いじゃ足りないか?」

(なるほど。”小遣い”としてかや、それなら表向きは関係ありんせん。)

数ヶ月どころか、数年は身隠れ出来る金額。
じゃが、それでは”流れ者”の名が泣きんす。

「”お小遣い”を貰って、お使いをしない訳にもいかないかや。」

「流石は”流れ者”。いや、海月ちゃん。」



それから、○○組と××組の杯の交わしは恙無く終わり、
それから、幾つかの抗争が続き・・・。



いつものように、街をぶらつき、そしてビルの隙間の狭い道へ入り、
タイミングをすませたかのように、

「手前のせいでぇえええええ!!!!!」

爺様から最後に継承したモノを懐から引き抜く。

『ラストオーダー』

それは、生者に贈る最後の銃弾。

爺様に身を守る為にと持たされた、最後の武器を適当に構えて、

「DEAD OR ALIVE?」



で、ぬしは誰かや?(゚、 。`フ

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