インタビュー
きーちゃんとコンビを組んでいるって本当ですか?
(アイドルとしてデビューして2年目・・・。
特に、ドラマや番組で主役になるわけでもなく、
端役や脇役ばかりだのう・・・。)
1人ボロいビルの一室で思いに耽る。
正直、デビューも歌い手として、出た訳じゃが・・・。
まぁ、世の中厳しいものでありんす。
その後は、適当な番組に適当に駆出されてばかり・・・。
壁に設置してある全面鏡の前に立ってみる。
そこには憂鬱な顔をした、わっちが写っておって・・・、
付けっぱなしの液晶テレビに目を向ければ、
煌びやかな舞台でダンスや歌を披露する同業者。
(街頭でスカウトされて・・・ホイホイ付いていってしまったのは、間違いだったかや・・・。)
今となっては過去の事、悔いても詮無き事でありんす。
ホワイトボードを見れば、チラホラと演出する番組の日程。
まぁ、貰えない芸能人も山ほどおるし、
わっちは、まだマシな方ともいえるかや・・・。
そんな事を考えつつ、背伸びをして・・・鳴り響く電話。
事務員を雇える程では無いらしく、大抵はわっちが電話番もこなしておる。
とりあえず、3コールなる前に受話器を取ってっと。
「お電話有難う御座います。○○事務所で御座います。」
「おうッ、海月か!!早速新人1人ゲットしたぞッ!!」
・・・社長からでありんす。
「はぁ、社長かや。どんな子かや?」
「それは見ての御楽しみだッ!!」
プツ・・・切られてしまった。
「新しい子かや・・・。まぁ、人員が増える事は反対は無いんじゃが・・・。」
(まぁ、正直、この業界の上下関係の酷さに病まなければ良いんじゃがな・・・。)
それだけが問題でありんす・・・。
正直、歌唱力や演技力なんかは身に付けていけたり・・・天性のものがあったり様々じゃが、
同業者の先輩や他の、圧力から病んで去っていった子も何名も目にしておる・・・。
そんな事を、考えつつ冷たい床で時間を潰すために柔軟運動。
どんな番組でも体は資本でありんす。
日が暮れたころには、ヴォイストレーニングをあったかや。
ありがたい事に、わっちにもコアなファンが付いてくれておる。
ならば、その声に応えねばなるまい。
っと、事務所のドアが開き、社長と、見知らぬ・・・女の子、いや、男の子かや?
「待たせたなっ!!」
「相変わらず、元気な社長でありんす・・・で、そちらの方が新人さんかや。」
つま先から、頭まで視線を動かしてみて・・・ふむ、見た目は悪くありんせん。
とりあえず、挨拶をしておくかや。
「初めまして、海月と申しんす。一応、外では『くー』で通っておるがのう。ぬし、名前は?」
「初めましてッ!!私ッ!!くっきーですッ!!くーさんの音楽も聴いたことがありますッ!!」
「・・・それは、ありがとう。」
(何とも元気の良い子かや・・・まぁ、それぐらいが丁度良いんじゃが、1つ気になる点がありんす。)
「社長。」
「なんだ?」
「この子・・・男の娘というモノかや?」
「流石に解るか。」
「骨格とかは隠しようが無いからのう・・・。でも、今は結構人気のあるジャンルじゃし売り込み次第でどうにかなるんじゃないかや?」
「それで、私に考えがあるッ!!」
「・・・ほう?」
(この社長じゃ・・・ろくな事を口にしそうも無いのう・・・。)
「この子と、お前とでアイドルユニットを結成するぞッ!!」
「・・・は?」
「は?って、私とじゃ不満なんですかッ!?」
泣きそうな顔で、詰め寄ってくるくっきーさん。
「いや、そう言う訳じゃないんじゃが・・・。」
と、くっきーさんをなだめつつ、
「いきなり過ぎやしないかや?」
「大丈夫だッ!!今晩の番組でユニット結成で出てもらうことになっているッ!!」
「この阿呆ッ!!いきなりすぎじゃッ!!」
「社長に阿呆とは何だッ!!」
「阿呆は阿呆じゃ!!」
(あー・・・どっと疲れてきおった・・・。
まぁ、番組を不意にする訳にもいかないし、
せめてユニット名だけでも決めておくかや・・・。)
「くっきーさ・・・くっきーちゃん、ユニット名は何がいいと思うかや?」
「えっとですねぇッ!!くーさんの『くー』と私のくっきーの『きー』で、『くっきー』が、良いと思いますッ!!」
「・・・それは、くっきーちゃんの名をそのまま使う事になるが大丈夫なのかや?」
「大丈夫ですッ!!」
(わっちはもう知らぬ・・・。)
こうして、アイドルユニット『くっきー』の結成と相成りんした(゚、 。`フ