インタビュー

喫茶店に着くと、まっさきに奥の少し薄暗い席へと座る海月さん。その迷いのないスッとした選択に彼女の芯の強さを感じながらも、薄暗い部屋を選んでしまう彼女の抱えている心の闇を垣間見た、けにうむであった。 「それで...先程の"ありんす"についてなんですが。」 抑えきれない気持ちを鎮めるために、僕はそっと煙草に火を伸ばした。 「いやね、この界隈では変なうわさがあるんですよ?"ありんす"と喋る女の子と一緒に歩いていた人が、行方不明になるっていうね...」 言ってしまった。もう後戻りは出来ない。僕は、いつも遠まわしに物事を伝えることが出来ない。あとは...

ありんす。アリス。ワンダーワールド。 surreal けにうむ作


僕は最近、海月さんにインタビューをしてみました。

そして、海月さんから未だインタビューの返答が来ないので

さらに妄想することにしました。

...

喫茶店に着くと、まっさきに奥の少し薄暗い席へと座る海月さん。
その迷いのない選択にの芯の強さを感じながらも、
薄暗い部屋を選んでしまうあたり、の抱えている心の闇を垣間見たけにうむであった。

「それで...先程の"ありんす"についてなんですが。」

抑えきれない気持ちを鎮めるために、僕はそっと煙草に火を伸ばした。

「いやね、この界隈では変なうわさがあるんですよ?"ありんす"と喋る女の子と一緒に歩いていた人が、行方不明になるっていうね...」

言ってしまった。もう後戻りは出来ない。
僕は、いつも遠まわしに物事を伝えることが出来ない。あとは...

海月さん「人はみな...臆病な生き物でありんす。」

「???...つまり?」

海月さん「"分からない"という状態にすることを何より恐れるのでありんす。よく分からないけど、人がいなくなる。でも、ただ居なくなるのは不自然で気味が悪いでありんす。そこで、何かしらの理由を付けてあげれば、少しはその気持ちが薄らぐのでありんす。」

「...ふむ。な、なるほど。でも、もし、そうだとしても今回のように理由づけしたのであれば、それは逆効果ではありませんか?だって、余計に非現実的でホラーじゃないですか?僕だと...うん、尚更怖いかな。」

海月さん「何が非現実的なのでありんすか?」

「え...?」

僕にはもう、この子が何を考えているかサッパリわからなくなってきた。
どういうことなんだ?なんで、こんなに平然としているんだ?
どう考えたって可笑しいじゃないか?そんな理由。
なんでそこに疑問を感じないんだ...疑問を。

「あ...!!」

二ヤリ...の口元が初めて緩んだ。

海月さん「けにうむさん、あなた言ったでありんすね。"ありんす"と喋る女の子と一緒に歩いていた人が、行方不明になるって...だって、それは本当であってリアルでありんすから。」

気付かなかった...
ふとの後ろに視線を動かすと先程の喫茶店の風景とは変わっていた。

いつから!?
いや、どうやって!?

火を付けた煙草は弱々しくではあるが、まだ明るさを維持していた。
時間にして、まだ数分の出来事である。
緊張しすぎていたわけでなく、気を抜いていたわけでもない。
ましてや、周りに気付かないほど鈍感なわけもなく...
いや、それも全ては自分の思いこみであり、自分自身が思うよりいかに自分と言うものが分かっていないことか。
結果は無慈悲にもそれを教えてくれる。

海月さん「わっちは...確かに存在しているのでありんす。」

先ほどとは打って変わって、は重く低い喋り方で話だした。

海月さん「...けにうむさん?あなたは本当に存在していたのでありんすか?」

え...
僕が存在していない......?



To be continued...






no title .麦わらの海月作

喫茶店に着くと、まっさきに奥の少し薄暗い席へと座る海月さん。
その迷いのないスッとした選択に彼女の芯の強さを感じながらも、
薄暗い部屋を選んでしまう彼女の抱えている心の闇を垣間見た、けにうむであった。

「それで...先程の"ありんす"についてなんですが。」

抑えきれない気持ちを鎮めるために、僕はそっと煙草に火を伸ばした。

「いやね、この界隈では変なうわさがあるんですよ?"ありんす"と喋る女の子と一緒に歩いていた人が、行方不明になるっていうね...」

言ってしまった。

もう後戻りは出来ない。

僕は、いつも遠まわしに物事を伝えることが出来ない。

あとは...

「あとは...その、真相を知りたいかや?」

ニヤリと笑って、心を読んだように考えていた事を口にする海月さん。

「何で分かったんですか?」

「簡単な事でありんす。」

そう言って、注文したコーヒーを一口飲んだ後、

「けにうむさんの言っていた界隈の噂と、口調と、思考をトレースすれば何となく分かりんす。」

不意に、目の前に居る彼女が人間じゃない別のモノに見えてくる。

「まぁ…、こんな風に良く当てるから、他人からは気味悪がられるんじゃがな…。」

苦笑しながら、またコーヒーカップを口に運ぶ。

僕は、何も答えられずに、ただ煙草をふかすだけだった。

「さぁ、気味が悪いと思ったのなら、ここでお別れでありんす…それとも、噂の真相を確かめてみるかや?」

急に真顔になり、選択を迫ってくる。

僕は…

「オフ会でこんな別れ方は失礼でしょう?暫く、付き合わせてもらいます。」

正直喉がカラカラで、それを口にするのが精一杯だった。
煙草を灰皿で揉み消し、冷めかけの同じ注文のコーヒーを一気に喉に流し込む。

「もう飲み終わったのかや…少し待っててくりゃれ。」

そう言って、少しずつコーヒーを口にしていく、海月さん。
間を持たすために、また煙草に火をつけ、チラチラと海月さんを観察してみる。
さっき感じた違和感は無く、ただ着ている服のせいで、少し浮世離れしてるが普通の女の子に見える。

「飲み終わったでありんす。マスター、チェック。」

そう言って2人分のコーヒー代を払い、さっさと喫茶店を出て行こうとする。

「自分の分くらい払いますよ。」

その言葉に、

「喫茶店が良いと言ったのは、わっちの我侭でありんす、ここは奢らせてくりゃれ。」

そう言って喫茶店のドアを開けて、外へ出て行く。
それに続くように、僕も喫茶店を出る。

「さて、何処へ行くかや?」

少し考えて、

「海月さんに任せます。」

「ふーん…なら、好きにさせてもらいんす。」

そう言って、歩き出した海月さんの横に並ぶ。

「何処へ行くんですか?」

「お洋服を見に行くつもりでありんす。」

そういって、暫く歩き、見るからに周りと浮いたアンティーク調の店の前に立つ。

「此処でありんす。」

そういって、ドアを開け、上部に取り付けてある鈴が澄んだ音を鳴らす。
中に入り、薄暗い照明の奥にあるカウンターを見ると、黒ずくめの、年齢がよく分からないが若そうな女性が、

「…いらっしゃい。」

若干俯き顔だった面をを上げて、気だるそうな目で此方を見てくる。

「好きに見せてもらいんす。」

「どうぞ…。」

そして、俯き気味に戻るカウンター越し女性、寝てたのだろうか?

海月さんは、色々と物色している。
フリルの付いた黒のドレスみたいなものに、シンプルなスカートまで…。

店内を見渡してみると、薄暗い照明のせいかとも思ったが、
置いてある服が、全部黒系統で統一されて、普通の服屋とは大分違う印象を感じる。

「此処は何屋なんですか?」

海月さんに聞いてみると、

「お洋服屋さんでありんす、ゴシック専門。」

「ゴシック、ですか…。」

「店長曰く、本物のゴシックはこんな物じゃないらしいんじゃがな。まぁ、時代の流れでありんす。」

そう言って、服をゴソゴソと選び、

「これ、どうかや?」

フリルの少ないワンピース?に、胸に大きなリボンが付いていて、
頭にはツバの大きなリボンでバラを模られた飾りのハットを被っている。
シンプルながら、それは良く似合っているように見えた。

「良いんじゃないですか。」

「じゃぁ、これにしんす。」

海月さんはカウンターに近寄っていき、

「これくりゃれ。」

「…6万でいいわぁ。」

カバンから財布を出し、真っ直ぐなお札を差し出す海月さん。

「丁度ね…着替えていく?」

「うん。」

「じゃぁ、奥を使いなさいな。」

「そうさせて貰いんす。」

そう言って、カウンターの裏に回って、お店の奥へと消えていく海月さん。

「貴方は…」

不意に、声を掛けられる。

「何でしょうか?」

「…いえ、何でもないわぁ。」

「そうですか。」

不思議な店だが…流石に、店主と2人っきりは気まずい。
1人外に出て、明るい店外に出てホッとし、
煙草に火をつけ、ゆっくりと昇っていく紫煙を眺める。

十数分後。

ドアの鈴の音と共に、海月さんが出てきた。

「お待たせしたでありんす、どうかや?」

そう言って、その場で横に一回転してみせる、海月さん。
全身が黒で、細身のその姿は今にも消えそうな幽霊にも見えて、

「…儚げですね。」

「一応、褒め言葉として受け取っておくかや。」

「そうしてください。」

「じゃぁ、次は…ゲームセンターにでも行くかや。そこなら灰皿くらいあるじゃろう?」

吸っていたタバコを急いで消して、携帯灰皿に放り込む。

「気を使ってくれるんですか?」

「待たせてしまったし…煙草が吸えるならカラオケでも良いんじゃが…けにうむさんは苦手そうでありんす。」

「そうですね。」

「じゃぁ、行くかや。」

また、1人で歩き出す海月さんの横に着いていく。
そして、大型のチェーン店に着き、

「わっち、クレーンゲームしたいんじゃが、良いかや?」

「灰皿のある場所で待ってますから好きにしてください。」

「じゃぁ、遠慮無くさせてもらいんす。」

そう言って、海月さんはクレーンゲームのコーナーへ、
僕は、灰皿のある場所を探してウロウロとし、
隅に置かれている据え置きの灰皿の横に立ち煙草に火をつける。

「行動だけ見ていたら、普通の子と変わらない。」

遠目に、クーレーンゲームの台に小銭を入れて、
必死な顔でクレーンの位置調整をしている海月さんを見て呟いてみる。

そして、

「取れたーッ!!!!」

店内中に響き渡りそうな声と共に、海月さんが一抱えもあるクマのヌイグルミを持って近寄ってくる。

「じゃーんッ、500円で取れたでありんすッ!!」

自慢げに見せてくる、が、正直興味が無いので、

「そうですか。」

「けにうむさんは何かゲームしないのかや?」

「あまり得意じゃないです。」

「じゃぁ、もう出るかや。」

外はすっかり、薄暗くなってきていた。
帰宅途中のサラリーマンらしき姿もチラホラ見かける。

ゲームセンターを出て、外を歩いているけど、
ヌイグルミを抱えながら歩く姿は妙に可愛らしく、
最初の印象と随分変わってきている。

横を歩きながら、

「それ、重くないですか?」

「重くありんせん、もふもふでありんすッ。」

周りにチラチラ見られているのも気にせず、
抱きかかえながら歩いていく、海月さん。

その足取りは確りしていて、

「次は何処へ向かうんですか?」

「もう、日も沈みかけじゃ。酒でも口にしたいじゃろう?」

「海月さん、未成年ですよね?」

「ノンアルコールのカクテルも出してくれるBarを知っておる。それに、けにうむさんも呑みたいじゃろう?」

確かに、普段からアルコールを口にしている自分は、この時間帯には少し恋しくなってくる。

「手持ちは少ないんですけど。」

「ワンコインじゃし、割り勘にするから大丈夫でありんす。」

そう言って、さっきまで歩いていた大き目の道から、
角を曲がって小道に入り、少し歩いて、
また、古そうな佇まいの店の前に立つ。

ドアノブには『OPEN』と書かれた看板が下がっており、
それを海月さんが開けて、中に入っていく。

それに続いて入っていくと、自然な動作でカウンター席に座り、
隣にヌイグルミを座らせていた。
僕も続いて、海月さんの隣へ座る。

カウンター越しに居るのは、初老のマスターで此方も見ずに、
黙々とグラスを磨いている。

「マスター、いつもの。疲れたから、甘めにしてくりゃれ。」

「メニューは置いていないんですか?」

「そんな無粋なものはありんせん、好きな物を頼みんさい。」

「じゃぁ、ウィスキーで、適当なものロックで。」

Barのマスターはグラスを磨くのを止めて、頼まれた品を作っていく。

「今日は、1日楽しかったでありんす。」

そう言って、ヌイグルミの頭を撫でながら、口にする海月さん。

「そうですね。」

タバコを取り出し、そっと差し出された灰皿に礼を言って、煙草に火をつけて一口吸う。

「しかし、連れまわしただけだったんじゃが、大丈夫だったのかや?」

「色々と見れて新鮮でした。」

これは素直な感想。

「それは良かったでありんす。」

そして、2人の前に差し出されるグラス。

「じゃぁ、今日はお疲れ様でありんす。」

海月さんが、自分のグラスを手に持ち此方へ向けてくる。

「お疲れ様です。」

カンッと軽く、ぶつけて、
一口、ウィスキーを口に運ぶ…少し生き返った気分だ。

海月さんもグラスを両手で持って、チビチビと口にしている。

それから、お互い黙々と口にグラスを運び、
僕が4杯目にさしかかった頃だろうか。

「もう、その辺にしときんさい。マスター、チェック。」

また、カバンからお財布を出し、言われた金額を払う、海月さん。

「割り勘って言ったじゃないですか?」

「酔いが少し冷めてから、払ってくりゃれ。」

そう言って、横に座らせていたヌイグルミを、
抱えて、席を立ちお店を出て行く、海月さん。

急いで、残り少ないウィスキーを流し込み、後を付いて行く。

「さて、酔い覚ましに少しだけ歩くかや。」

小道を歩きながら、唐突に立ち止まる、海月さん。

「引き返すのなら、今のうちでありんす。この先に、巷の噂とやらが、待っておる。」

ハットに隠れて表情は見えないが、その声は冷たい。

普段の僕なら引き換えしていたかもしれないけれど、
酒が入っているせいか、

「真相を見てみたいです。」

そう、口にしていました。

「…後悔しないでくりゃれ。」

そう言って、また歩き出す、海月さん。
それに着いていく僕。

次第に、街頭の数が減り、月明かりが目立つように…。
月明かりが赤い…?

周りを、改めて見渡すと、暗がりになってよく見えないけど、
細道の風景も少し変化している。

「…手遅れでありんす。」

そう言って、悲しそうな顔を見せてくる、海月さん。

「此処が答えでありんす。」

「…如何いうことですか?」

「アレを見てくりゃれ。」

海月さんが指を刺した先には、白くてブヨブヨしたモノが…蠢いているッ!?

「わっちに着いて来て、形を保てなかった者の成れの果てでありんす。」

「ここは、異界への入り口。自分を保てなければ、アレに成り果てる。」

「ぬしは、自分の形を保っていられるかや?そうすれば、人の形は保っていられるが…人では無くなりんす。」

「な、何を言っているですかッ?」

「神隠し、でありんす。」

そして、体が崩れていく感覚…。

「ゴメンなさい。巻き込みたくなくても、これが、わっちの呪い…異界に取りこまれた者の使命でありんす。」

そして、僕が最後に聞いた言葉は、

「ぬしなら形を保っておられると思ったんじゃが…残念でありんす。」

そして、溶けていく体と意識…。

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