インタビュー
地球最後の日に、好きな人としたいことは何ですか?
誰も信じてはもらえませんが、魔女のお店でアルバイトをしています。
魔女と言っても見た目は20台半ば、長い黒髪、黒尽くめの綺麗な方です。
「明日、世界が終わるらしいでありんす。」
魔女は、アンティークな椅子に座りキセルを吹かせながら、
「そうねぇ。」
と、だけ答えてきました。
「でも、止めたいでありんす。」
「なんでぇ?」
気だるそうな目で、わっちを見てきます。
「それは…。」
「海月は死にたかったんでしょう、なら良いじゃない。」
「死にたいのは、わっちだけでありんすッ!!」
魔女はつまらなさそうに、
「死にたい人は、いっぱい居るわぁ。アナタだけじゃないでしょう?」
「それでも、こんな終わり方は理不尽でありんす。」
「…ふぅん。」
キセルの灰を捨てて、新しく火をつけて、
「止めたい理由は?」
「話したら、止める方法を教えてもらえるのかや?」
「場合によってはねぇ。」
わっちは、一呼吸置いて、
「…貴女が好きだからでありんす。」
それを聞いて、魔女はキョトンとした顔をした後に、
「アッハハハハハハハハハハッ!!」
…大笑いをされました。
「…おかしな事かや?」
「いや、地球最後の日に告白で、相手が私とはねぇ。」
まだ、お腹を抱えて笑っています。
「最後の日に告白って素敵じゃないかや?」
「若いねぇ。」
「でも、告白したので、最後にはさせないでありんす。だから、止める方法を教えてくりゃれ?」
魔女は椅子から立ち上がり、一冊の本を持ってきました。
「これ、何だと思う?」
「ロクでも無いものでありんす。」
「間違っていないわぁ…これは、悪魔との契約書。」
そう言って、差し出してきました。
そして、頭に手をポンと置かれ、
「契約をすれば、その血、その髪、その目、全てを持っていかれるでしょう。」
「構わぬッ!!」
しっかり、と本を握り締めて、言い切りました。
「…バカな子。」
「バカで結構。」
魔女は、私の頭をそっと撫でながら、
「止めないわぁ、逝ってらっしゃい。」
「行ってきますッ!!」
そう言って、わっちはお店を飛び出したでありんす。
独り残された魔女は、
「500年生きて、こんな告白をされるなんてねぇ…明日が終わってもいいから生きて帰ってきなさいな。」
魔女は、そう呟きました。
お店から抜け出した後は、自宅のマンションの屋上へ一直線で向かいます。
途中、色々な人を見かけて、襲われたりもしました。
でも、何とか辿り着きました。
そして、ページを開いて…。
「…何をすればいいのかや?」
書いてある事は、サッパリ分かりません。
「ええいッ!!何でもいいから、さっさと出てきてくりゃれッ!!」
本をコンクリートの床に叩きつけて、そう叫びました。
『誰だ?こんな、不埒な事をする輩は?』
「わっちでありんす。」
気付いたら、背中に真っ黒な羽を生やし、頭から捩れた角が出ている、見た目は男性が立っていました。
「ふんッ、召還にしては荒っぽいな。」
「投げたら勝手に出てこられただけでありんす。」
「とりあえず若いの…お前は何を望む?」
「…ぬしは、わっちが何を言っても捻くれた方法でしか願いを叶えてはくれないのじゃろう?」
「よく解かっているじゃないか。」
長すぎる犬歯を、見せてイジワルそうにニヤリと笑う悪魔。
「悪魔と、まともな交渉が出来るなんて最初から思っておらぬ。」
「で、何を望む?」
ニヤニヤと聞いてくる悪魔に、ニヤリと笑い返し、
「わっちの願いを全て叶えてくりゃれ?」
「対価は?」
「わっちじゃ。」
っと、答えた瞬間に胸にドスッという衝撃、
見下ろしてみると心臓辺りに悪魔の肘までが突き刺さっているのが見えました。
「簡単に命を差し出すか。」
そうして、頭に手を当て、
「お前の願いを読み取ってやるから、10秒は生きていろ。」
「ざ、刺すま゛え゛に…し゛てく゛りゃれ゛…。」
口からは、血が大量に出てきて上手く喋れません。
「願いは解かった、叶えてやる。」
そして、遠のいていく意識…。
(後頭部が柔らかいでありんす…。)
目を開けると、そこは地獄じゃなくて…魔女の顔が見えました。膝枕をされていたみたいです。
「…何で生きているのかや。」
「アナタが何て願いをしたのかは知らないけれど…悪魔が届けに着たわぁ。」
「…何て言ってたのかや?」
「ふふふ、『こんな願いを聞き届けるなんて初めてだ。』そうよ。」
「結局、世界はどうなったのかや?」
「無事に明日を迎えたわぁ…ちょっと、世界中混乱しているみたいだけどねぇ。」
そう言って、頭を優しく撫でてくれます。
「願いはかなったのかや…。」
「アナタの矛盾しすぎた願いに、悪魔もひねた答えは出せなかったみたいねぇ。」
「ニヒヒヒ、知恵比べで悪魔に勝ったのかや。」
「その代償は大きいわぁ。」
そう言って、魔女は手鏡を見せてきました。
「…これは何かや?」
「黒の猫耳ねぇ。尻尾も生えているわよ?」
そう言って、何かをつかまれる感覚と共に、ヒラヒラと黒い尻尾を見せられました。
「…命を持っていかなかったのかや。」
「矛盾を答えた代償として人間を辞めさせられたみたいねぇ。ちょっとした意地悪だわぁ。」
「怪になったのかや…。」
「魔女に黒猫、ピッタリじゃない?」
「普通は人型の猫じゃ無いと思うんじゃがなぁ…。」
そうして、魔女のお店は、魔女と黒猫の怪のお店になったでありんす(゚、 。`フ