インタビュー
なんで海月の前に麦わらがついているんですか?
とある真夏日の事でありんす。
「兄様ー、エアコンの温度下げたらダメかやー?」
ぐてーっと、フローリングに寝転がって、本を読んでいたでありんす。
「…。」
「兄様ー…返事が無い、ただの屍のようだ。」
「…とりあえず、その服装を如何にかしようか。」
そう言われて、自分の服装を思い出してみたでありんす。
黒のダボダボお下がりハイネック、黒のチノパン、黒のソックス。
「ハイネック脱ぐと、下は下着じゃがそれでも良いかや?」
「よしッ、服を買いに行くよッ!!」
「いってらっしゃーい。」
「バカ、お前のだ。」
「熱いから出たくないでありんす。」
そう言って首だけ窓に向けたら、眩しいほどに明るい。
「こんな日は、エアコンの効いたお部屋でノンビリするに限りんす。」
そう言って、読んでいた本に栞を挟んで、丸くなりんした。
お昼寝でありんす。
「見ているこっちが暑い、さっさと行くよ。」
そう言って、脇に腕を差し込まれて、無理矢理立たされたでありんす。
「ヤダヤダヤダヤダ。」
「車まで我慢しなさい、冷房効かすから。」
「はーい。」
そう言って玄関へ行って、靴を履いて、ドアを開けて…そっと閉めたでありんす。
「どうした?」
「…これは出たら溶ける。」
「溶けないから、早く行くよ。」
そう言って、腕を引かれて車庫まで連れて行かれたでありんす。
そして車に乗って…外より熱帯地獄でありんす。
「海月の冒険はここで終了した。」
「冷房が効くまで、我慢しときなさい。」
そういって、ボーっとしていると、やっと冷房が効いてきたでありんす。
「文明の利器様々じゃなッ。」
「元気になって何より。」
流れる景色を眺めながら、
「何処へ行くのかや?」
「しまむら。」
「定番過ぎでありんす…。」
「文句言うな。」
「そういえば、財布を忘れたでありんす。」
「今回だけは買ってやる。」
「兄様ふとっぱらー。」
「最近、腹が…。」
そんな会話をしているうちに、着いたでありんす。
「…外出たくにゃい。」
「キーを外したら、どっちみち冷房きれるよ。」
「早く店内に行くでありんすッ。」
車のから降りて、勢いよくドアを閉めて、店舗の入り口に向かったでありんす。
そして、ピョンピョンとジャンプしたり、手を振ってみたり、
「…海月、何してるの?」
「自動ドアが開かないでありんす。」
そして兄様が近づくと、普通にドアが開いたでありんす。
「これは国家の陰謀かやッ!!」
「しまむらが国営だったら凄いな。」
店内を歩き回って、
「すずしーでありんす…。」
フラフラしてたら、店員さんが近づいてきたでありんす。
「お客様、何かお探しでしょうか?」
「お洋服ッ。」
「…こいつに適当に夏服を見繕ってやってください。」
「畏まりました。」
そして、Tシャツ、ショートパンツ、スカート、と色々と出されて、
「どれが良いのか分かりんせん…。」
「適当にシャツと…アレ似合うんじゃないか?」
そう言われて、指を指されたのは白のワンピースだったでありんす。
「あ、あれかや…。」
「ご試着なされますか?」
「白は…。」
「いいから、着てこい。」
そう言って、試着室へ連れて行かれたでありんす。
「白かや…。」
観念して腕を通す事にしたでありんす。
「あ、兄様ー。」
「ん、着替え終わったか?」
「…うん。」
「見せてみろ。」
思い切ってカーテンを開けて、見たでありんす。
「おー、似合ってるんじゃないか。」
「じゃが、靴下が黒だから恥ずかしいでありんす…。」
「ちょっと待ってろ。」
兄様がカーテンを閉めて、何処かへ行かれてしまったでありんす。
そして数分後。
「持ってきたぞ。」
手には白のソックスが握られていたでありんす。
「ありがとう…。」
受け取って、履き替えて、
「兄様ー。」
「履き替えたか?」
「…うん。」
そう言って、カーテンを開けたでありんす。
「だいぶ涼しげになったな。」
「後は、靴とかを…。」
「それは自分で選べ。」
「はーい。」
適当に白のヒールを選んで、
「何か物足りないな…?」
兄様が全身を眺めながら、口にされたでありんす。
「何が足りないのかや…?」
そして、また店員さんが近づいてきたでありんす。
「わぁ、お似合いですねッ。」
「えっへんッ。」
「…すいません、こいつに、後何か選んでやってもらえませんか?」
「そうですねぇ…。」
そういって、帽子のコーナーへ連れて行かれたでありんす。
「これなんてどうでしょう?」
そう言って、差し出されたのは麦わら帽子だったでありんす。
試しに、被ってみて、
「兄様、どうかや?」
「完璧で御座います。」
「ニヒヒヒ。じゃぁ、これくりゃれ。」
「分かりました。」
笑いながら麦わら帽子を受け取った店員さんは、会計をして、
「着けていかれますか?」
「是非ッ。」
「タグをお取りしますね。」
タグを外して、渡してくれたでありんす。
「後これも、お願いします。」
と、兄様がレジに差し出したでありんす。
「海月の暫くの着替え。」
「か、勝手に選ぶなんて変態ッ!!」
「もうちょっと成長してから言えー。」
とりあえず、ヒールで脛を蹴って、先に外へ出たでありんす。
いってーッ!!!!!っという、叫び声を背に、素直に開いてくれた自動ドアを通り抜けて、
外は真夏日。
熱気漂うコンクリートの上には真っ白の麦わら少女。
「無敵真夏少女の完成でありんすッ!!」
…通りすがりの客から変な目で見られたのは言うまでもありんせん。