みそ(過敏)の日記

2020年10月07日 21時09分

確かに、ここにいる 第4話

田島は高校の頃から仲間とバンド活動をするほどの音楽好きで、大学でもすぐさま軽音サークルに入った。だからこんな派手ななりをしていても、様になって見えるのか。
「そこで出会っちまったわけよ、オレの女神に」
よく通る声で田島は語る。
田島の女神様は、あまり周囲との関わりのない僕でも知っているくらいの有名人だった。
吉野 梢、アイドルグループにいてもおかしくないくらいの整った顔立ちに、誰とでも分け隔てなく接する如才のなさで、かわいい子につきもののやっかみ半分の悪い噂も聞かない。
ただのお隣さんでしかない僕に対しても、笑顔で挨拶してくれるくらいに彼女は健全だ。
「あのさあ、田島」
「んっ?」
「お前が用があるのは僕じゃなくて、お隣さんなんじゃないの」
「早川」
「なに?」
「お前、よくわかったな」
そんなまじまじと言われても、小学生でもわかるようなことだ。
「まあそうなんだけどさ、ほら、よく言うじゃん。まずは外堀を埋めろって」
「それはお隣さんと仲良くなることじゃなくて、意中の人の友だちと仲良くなることだろ」
「意中の人って、お前ばあちゃんみたいな言い方するな」
「ほっとけ」
「えっ、というかお前、こずっちと仲良くないの?お隣さんなのに?」
こずっちというのは吉野さんのことだろう。触れるとめんどくさそうなので聞かなかったことにする。
「田島はお隣さんと交流があるのか?」
「ああ、オレがギターを弾くと壁をドンドン叩いてノッてくれるんだ」
こいつ、とんでもないことを胸を張って言うな。田島のお隣さんに心底同情してしまう。
「違う、それは抗議されてるんだ」
「えっ、そうなの?」
「今すぐ菓子折りを持って、お隣さんに謝ることをおすすめするよ」
「うーん、そこまで仲良くしたい感じのやつじゃないし、いいや」
あっけらかんと笑った。いずれこいつはお隣さんに刺されるか、アパートから追い出されるに違いない。