心の経費、カラダの関係1

ある商社。
伝票や領収書をめくる音が響く。
速水修一。25歳。経理課で最年少であり、主任でもある。領収書を素早くめくり、チェックをする。
「課長。この接待飲食代の領収書ですが、番号がなく、日付もバラバラですが、金額からして同日に切られた可能性が考えられます。一度、営業課に確認を取ってから精算した方が良いかと思います」
「わかった。ちょっと食堂に行こう」課長が誘った。
食堂の喫煙所で、コーヒーを片手にタバコをふかした。
「速水君、実は来週、中途採用の社員を入れる事になった。いつもの事だが、教育係と歓迎会の手配をお願いできんかね?」
「わかりました。いいですよ」いつものことだ。
「ちなみに、君より2歳年上だ。やりづらい部分もあるかもしれないがよろしく頼むよ」
翌週。
課長の予告通り、やってきた。名前は野田 真美子と言った。赤いセルフレームの眼鏡をかけた女性だ。自己紹介が終わり、修一と社内を見学する事になった。色々な課を巡りながら経歴を聞いた。
「野田さん、経理は初めてですか?」
「はい、初めてです」
「そうですか。ここは会社の運命を決めるので、一円たりとも不正を見逃さないようにして下さい。運命を決めると言っても過言ではありません」
「はい。わかりました」
歓迎会の二次会。
課長は酔っ払い、マイクを離さない。修一は一人でビールを飲んでいた。すると、真美子がビール瓶を差し出した。
「主任、お酒はお好きですか?」
「うん。まぁ、飲む方だよ」
「そうですか。私、カクテル好きです」
「カクテルか。しばらく飲んでないな。マルガリータが好きだけどな」
「私も好きです!一緒に飲みに行けたらいいですね」
「仕事に慣れたらいこう」
「はい!行きましょう!」