リングの切符10

ゴールデンウイークが終わった。
誠一郎と英美は、連休をもらい、九州に出かけることにした。その日の夕方のフェリーで、新門司を目指す。
―夕方―
大阪南港に二人はいた。
「観光はノープランだから、予定が許す限り観光できるよ。温泉に浸かりたいよね?」
「うん!温泉でゆっくりしたい!」
「じゃあ、まずは別府だな。折角だから、湯布院に行こう」
「楽しみ」すると、乗船開始のアナウンスが流れた。
船は天井が広く、ホテルのロビーを思わせる。フロントで部屋の鍵を受け取った。二人が泊まるのは、一等和室。洋式に飽きた二人には、落ち着いて過ごせるだろうと英美が提案した。
「おお、こじんまりとして丁度いいな」
「そうだね。お布団くっつけようね」
17時。船はゆっくりと動き出す。夕方の大阪南港は夕日に包まれていた。一先ず二人は風呂に入り、食事をしてビールを片手にデッキに出た。
「風が気持ちいいね」
「うん。暑くもなく寒くもないな」
「船旅もいいね」
「たまにはいいな」
「あ、携帯が圏外…」
「不便なのもいいだろ?」
「そうね。この後、遊ぼうね」
船は瀬戸内海をゆっくりと進んでいく。