2019年12月14日 22時11分
リングの切符8
二人は鳥取を後にし、岡山へ足を向けた。
「さすがに雪がないね」
「暖かいからかな」
「ふーん。眠い」
「寝てていいよ?」
「うん」英美は誠一郎の肩で眠った
ー岡山ー
「ここで乗り換えだよ」
「え?どうして?」
「岡山市内は何もないから、倉敷へ行くよ」
「何があるの?」
「行ってからのお楽しみ」
ー倉敷ー
白壁の建物が並ぶ。城下町の雰囲気が漂う。
「なかなか歴史のある感じだね」
「昔は栄えたものさ」
「あ、夕方」
白壁が夕日に染まる。今回の旅の終着地点でもある。二人はホテルへ向かった。
夕食を終え、二人はダブルベッドで寝そべっていた。
「明日は大阪へ帰るのね。なんだか寂しい」
「月日は百代の過客にして、行き交う年も又旅人なり。松尾芭蕉はこう詠んだ」
「旅人というのは一瞬なのかしら」
「そうだな。きっと一瞬だよ。でも、旅人が行き交っているのは間違いない」
「そうか。私達の出会いは…」
「…うん、きっと偶然が呼んだもの。で、君が側に居るって感じかな」
「でも、貴方が居なければ東京大阪を往復してただけかも知れないね」
「うん。そうだね。俺も楽しい旅になったよ」
「嬉しいわ」英美は誠一郎の頬にキスをする。
「ズルいぞ。それ」
「今は頬っぺた。そのうちね」
英美はいたずらっぽく笑った。